とりあえず何でもいいあいつ

たまたま河原を散歩している時だった。
スマホにイヤホンマイクをつなぎ、話しながら歩く。

遠くから、ムチムチの筋肉を白いノースリーブからはみ出したおっさんが現れた。

その人は多少若い、40代くらいのニコニコしたでかいおっさんだ。

そうなのだ、今いるここは都内ではなかった。

だからつっかけに足を突っ込んで外に出て散歩するようなあられもない
ムチムチな格好でも許されるのだ。

横にはグレーのシュナウザーのようなものが。
しかし品種はあまり詳しくないので追及しないことにする。

そしてすれ違うために彼らが近寄ってきた時、
そいつはものすごい勢いとものすごい声量で吠えてきた。
シュナウザーの方だ。おっさんではない。

いや、私、悪い事してないですし。何??

と、思いつつ、ビビりながら眺める。

こちらを見ながら、ずっと吠え続ける奴。


とりあえずムチムチな飼い主が通り過ぎるのを待つ。


・・・はあ〜、遠くに行った。
うるさかった。
いやはや。


しかし、なぜ奴は突然吠えたのか?


その後、数分して思い当たる節に思い当たったのだった。


そういえば、私、巨体の飼い主にこっち来るな、と絶賛、
敵意を飛ばしていなかったか?
ムチムチの飼い主は降り出したばかりの小雨にますます
白い布がピタピタとなってしまう。
まじ近寄るな、と思っていなかったか?と。

ほんの一瞬の瞬きする暇さえない時間のこと。

奴は飼い主に危害を加えそうなやつは容赦せん、という犬の中の鏡のような
奴だったのかもしれない。

さすが犬。


以前も、依存性にしか見えない媚びた不恰好なマルチーズに
0.07秒ほど悪態をついたことがあり、
すっかり忘れて挨拶をしれっとしていた数秒後、
ものすごく吠えられたことがあったのだった。

たとえ一瞬だろうが、犬は見逃さない。
さすが動物。反応が速いのだ。


(このようなことを書くと動物を相手に非常な迫害者に思われそうだが
自分でもなぜ白いマルチーズがやたらに嫌なのか探ったことがある。

記憶を辿ると、
幼稚園の時に遊びに行っていた知人宅の多頭飼いのマルチーズが汚くて
非常に臭いオスで、遊びで飛びかかってくるという非道な奴だったのだ。
園児には重いのなんのって。

思い出したのはここ1、2年くらいだが、すっかり忘れ去っているような原体験が
大人になった今、出会う白いもじゃもじゃへの警戒心につながる。)


で、ここで終われば簡潔な話で済んだものの、そうではなかった。

遠目に川沿いのシュナイザーな奴を見ながらそう思っていたのもつかの間、
向こうですれ違う白髪混じりのご婦人にも、奴は吠えていた。


誰でもいいのか、お前!

とりあえず威嚇しておけばいいと思っているのか!


と、私が遠くで思っていることもつゆ知らず。


そしてしばし川を眺めながら電話をしていると、
奴が飼い主とともに戻ってきた。
そんな距離行ってないけど、もう戻ってきた。

次、どんだけ吠えられるかわかったもんではないので、身構える。

そして、一応話しかける。

(こんにちは。お散歩楽しそうですね。えへへ。)

と、言うまでもなく、奴はニコニコこちらを見上げて
尻尾フリフリ飼い主と去っていくのだった。

なぜ吠えたのか、わからぬまま、今日に至る。


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by tamitamix | 2016-08-20 22:49  

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